
ステンレス
ステンレス鋼とは、その名のとおり、さび〈Stain〉ない〈less〉鋼〈Steel〉としてよく知られています。鉄に12%以上のクロムを混ぜることで、その表面に自然と酸化被膜が自生し、錆を防ぐ役割となります。
歴史は比較的新しく、18世紀、鉱石のなかにクロムが発見されたことからはじまりました。
その後、ヨーロッパ世界で合金についての研究が進み、19世紀にはクロムと鉄の合金、20世紀になるとクロムとニッケルを鉄に混ぜた「さびない鉄」が発明されました。
日本では、昭和30年代の高度経済成長期に都市近郊に団地が次々と建設され、その団地の流し台にステンレスが採用されることで一気にその存在が世の中に認知されました。その後、浴槽や建築建材など生活の様々な場面で使われ、身近な素材となっていきます。
ステンレスとAbel Black®
ステンレスはシルバー色が特徴的な素材です。その着色には塗装やメッキなどの方法が試みられてきましたが、剥がれる、褪色するなど、色の耐久性に課題がありました。
そこでアベル株式会社ではステンレスの表面を覆う酸化被膜に注目しました。電気と薬品の作用により酸化被膜の厚みを成長させ、光の干渉を利用することで、黒色を認識することを可能にしています。
ステンレスの特性
ステンレスは、耐食性や機械的性質を向上するために、ニッケルやモリブデンなどの合金元素が添加されています。
そして表面には不動態皮膜と言われる保護性の強い皮膜が形成されています。この不動態皮膜は、非常に薄い鉄とクロムを含む酸化物(水酸化物)であり、その膜厚は極めて薄く、1μの100分の1以下です。従って、機械的には、容易に破壊され、裸の金属が露出しますが、酸素や水蒸気、水などに触れると直ちに修復されて、耐食性を保持します。


酸化皮膜 組成

オーステナイト系
18%Cr-8%Ni
(SUS304)

フェライト系
18%Cr
(SUS430)

マルテンサイト系
12%Cr
(SUS410)
種類 | 特性 |
---|---|
304系 |
・高強度ステンレス鋼 |
316系 |
・耐孔食性 |
430系 |
・耐熱、耐酸化性 |
ステンレスの磁性
ステンレスは、磁石につくものとつかないものがあります。
18-8(SUS304)は磁石につきませんが、18Cr(SUS430)は磁石につきます。ただし、SUS304でも加工すると磁石につくようになります。
これは、先ほど示した結晶構造の差に起因します。オーステナイト系は、磁石につかないがフェライト系およびマルテンサイト系は磁石につきます。SUS304を加工するとオーステナイト組織から一部マルテンサイト組織に変わり磁石につくようになります。